アフガニスタンのフィールズバハール(Feruz Bahar)小学校は本当に2ちゃんねらーによって建てられたのか、現状はどうなのか
先に言ってしまうと廃墟探索家・稲葉渉が2023年にある程度調べており管見の限りでは大筋を外れていない。従ってまずはこちらの発言を拾い、補足する形で軽くまとめる。
1.学校建設は実際には再建だった
→再建をどう見るかによる
当時の事業のアーカイブサイトであるSCJ(Save the Children Japan)の報告を見てみると、2003年7月の報告にその内情が書かれている。それを引用すると「フィールーズ・バハール村は(中略)タリバン時代は大きな被害を受けたところで、長年の内戦により校舎が破壊されてしまいました。現在、子どもたちは近くにある壊れた建物(病院)にて授業を受けていますが、建物の破損がひどく適切な教育を受けられる環境にありません」とのこと。
以上の事情を見ると、一度破壊された校舎を建て直すという意味では、「再建」であると同時に「イチからの建設」とも言えるだろう。
2.建設には500万の資金が必要だったが、2ちゃんねる民は20%以下しか調達できなかった
→概ね事実
まず2ちゃんねる民の総計募金額は各所に出ているが、述べ95万弱ほどと予想される。
↓2003/1/18時点で926,500円
↓2003/8/3時点で943,000円
対してSCJの元URLはリンクが切れていたが、最初のスレの時点で>>1が「小学校一校500万~」とSCJのサイトを貼りながら説明しているため500万の資金というのは事実であろう。
同時に初代のスレでは、>>422などで目標金額を300万に下方修正する案も出ている。
結果として足りない分はカカクコムなどが共同出資という形で補ったと見られる。
3.フィールズバハール小学校はそもそも実在したのか
→SCJを信じるなら実在は間違いない。現存するかどうかについては4へ
20年以上前の事業だったこともあり、資料やリンクが散逸している。そのため建設を示すソースが少ない。またNPOの事例などでこうした慈善事業団体は、学校を建てるふりをしているだけではないかという信頼の薄さが背景にある。
「2ch有志でアフガニスタンに学校を作ろう!」というねらー有志によるサイトでは、SCJから贈られたであろう当時の写真が残っている。これを見る限りでは建設を疑う余地はなないが、稲葉は「画像が意図されて非常に小さいサイズになっている」と指摘している。
確かに小さいのはそうだが、例えば11枚目の写真はスレの発起人である>>1が比較的大きいサイズのものを上げているし、これだけで決めつけるのは早計な気がする。 また、SCJの2004年の報告書によると「バミヤン県にて前年度から継続中の学校建設3件のうちアンダー女子小学校とフェロズ・ビハール小学校は校舎が完工し」と述べられており、時系列も合致する。 このうちアンダー女子小学校は藤原紀香が単独で出資して建設したものであり、こちらは2006年にSCJが記事を出している。
一方でSCJが2ちゃんねらーについて触れているような記事はなく、「フェロズ・ビハール小学校」というワードが出てくるのも上記の報告書のみである。このこともソースに乏しく、実在が疑われる契機となっているだろう。
だがこれに関しては、そもそも2ちゃんねらーが前述の通り20%しか出資していないこと、そもそも全面出資している上に現地まで赴いている藤原紀香と違い表に出しにくい存在であることなど、複合的な要因があると言える。ましてや2004年という世相を考えればなおのことである。
4.フィールズバハール小学校は現在どうなっているのか
→2021年時点で600人ほどが通っているという情報アリ。ただし日本の番組における口頭のものであり、それ以外の現存するというソースは発見できず。
恐らく本案件において最も取り沙汰されている問題はこれだろう。
3で述べたソースの散逸も手伝っているのか、フィールズバハール小学校は現在どうなっているかの情報が全くない。
ねらーの有志が作った公式サイトでも、建設完了後の顛末については一切書かれておらず、更新が停止している。
なお既出の情報として、一応のところフィールズバハールには「フィールズバハール高校」が存在しており、ストリートビューなどはないがgoogleマップからでもその存在を確認できる 。 このフィールズバハール高校はFacebookに情報が確認できた。男女混合で属するフィールズバハール高校の生徒が、地域や行政の人々と協力して庭園に植樹を行ったという内容である(2021年4月)。
しかし上記のFacebookに映る校舎を見ても、いくら月日が経過したとはいえ校舎はともかく立地そのものが違うように思える。これが移転されたものなのかは不明であり、そもそもアフガニスタンにおける小学校と高校の違いはよくわからない。
「小学校」と銘打たれた方は全くと言っていいほどソースが見つからない。
試しにアフガニスタンの公用語であるパシュトー語とダリー語、そしてペルシャ語などの文献を漁ったがそれらしきものは見当たらなかった。
ハヤヤンというユーザーが行った調査では、コロナ禍において罹患した際に周辺地域に助けを求める、Helpmecovidのサイトにもその名が見当たらなかったという。
その後も調査を続けると、2021年10月29日の『ABEMA Prime』にて2ちゃんねるが特集され、その際にフィールズバハール小学校の話題が取り上げられている。重要なこととして、その際に平石直之アナから次のような言葉が発された。
「2ちゃんでですね、アフガニスタンに学校を作ったみたいな話も聞いたりして。でこれ3月の時点でも今あって、600人ほどが通っているっていう話もあります」
この際ゲストとして同席していたのは自称ねらーのバーチャル2ちゃんねらー裕子というユーザーである。そして彼は番組終了後翌日にこのようなツイートをしている。
「2ちゃんの募金で建設されたアフガニスタンの学校は当時小学校が建設されたとこまではわかってたんだけど、昨日のアベプラでその学校は現在も健在で、今では高校まで拡充されてるということが問い合わせでわかったそうな」
この『ABEMA Prime』の報道を鵜呑みにするのであれば、フィールズバハール小学校は現存するどころか、600人という大規模な生徒を抱えていることになる。
しかし考えてみるに、先ほどgoogleマップで示したフィールズバハールは、標高2,500メートルの岩山に切り開かれたお世辞にも大規模とは言えない集落である。そんな集落に果たして600人もの生徒が集まるのだろうか、という疑問がある。
フィールズバハール地域をドライブしている動画を発見したので置いておくが、やはり見渡す限り岩山という感じで、民家はまばらである。
その上先述した『ABEMA Prime』の報道は、あくまで出演者のやり取りのみであり、映像や物証などは何も提示されていない。例えば先ほど11枚目の写真として挙げたプレートは、ねらーがフィールズバハール小学校に出資したことを記念した表記がなされているが、これがそもそも現在どうなっているかなどは全く分からない。そのほか現在の校舎の様子なども全く不明のままである。 以上まとめ
フィールズバハール小学校の建設費用は500万円であり、ねらーはその20%ほどを出資したに過ぎない(無論活動として立派なものであるというのは承知の上で)。
フィールズバハール小学校は、少なくとも2004年の時点で建設には確実に至っている。しかしその後についてはほとんどソースがない。
『ABEMA Prime』によれば、2021年の時点でフィールズバハール小学校は存続しているばかりかさらに大規模となっているが、それを裏付ける証拠は一切存在しない。
さらに最後に補足しなければならないこととして、ちょうど2021年の報道に前後して、タリバンが再びアフガニスタンの政権を握ったことは記憶に新しい。すなわち2021年時点では現存しているのが事実だとしても、現在ではフィールズバハール小学校は再び戦禍に遭っている可能性も否めない。
ねらーによるこの事業は、インターネット上に「やらない善よりやる偽善」という言葉を大きく広めたと言われる。その偽善は、2025年現在でもフィールズバハールの地にまだ根付いているのか否か。力不足で申し訳ないが、僕の調査ではここまでが限界であった。